3回目の彫金教室。甲丸リングが完成しました
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これが、甲丸リングという基本の輪郭です
3回目のレッスンでは、基本制作物の二つ目となる 甲丸リング を仕上げました。
純銀を使い、人差し指にも映える5ミリ幅のしっかりめの太さで制作しています。
甲丸リングは、断面がゆるやかなアーチを描く“こうまる”形。
かまぼこ型とも呼ばれ、丸みが指に沿うように馴染むため、結婚指輪にもよく使われる形です。引っかかりが少なく、付け心地がとてもなめらかで、手元にやさしい空気をまとわせてくれます。
■ 金属の“重さの性格”を知る──比重の話
この日のレッスンでは、金・銀・プラチナといった貴金属の 比重 についても触れました。
日常ではあまり耳にしない言葉ですが、ジュエリー制作ではとても大切な基本情報です。
比重とはひとことで言えば、
「重さ」と「大きさ」の関係を示す値
同じ大きさの金属でも、中にどれだけ“ぎゅっと詰まっているか”が違うため重さが変わります。
基準となるのは水で、1立方センチメートルの水=1g(比重1)。
これをもとに比重を見ると、貴金属の個性がよく分かります。
- 銀 … 10.53
- 18金 … 14.84~16.12
- プラチナ900 …18.61~20.08
数字が大きいほど“重い金属”ということ。
こうして並べてみると、プラチナの比重が飛び抜けて高いことが分かります。
プラチナは地球上に存在する金属の中でも 3番目に重い と言われ、貴金属の中では最重量級。
たとえば、まったく同じデザインのリングでも、素材をシルバーからプラチナに変えると重さはほぼ2倍 になります。
手に取った瞬間の“ずしり感”は、まさに比重という性格の違いから生まれているのだそうです。
■ デザインと素材の“相性”という現実
そして、比重を学んだことで気づいたことがありました。
リングを作る上では、ただ「好きな素材で作ればいい」というわけではなく、デザインと素材の相性を考えることがとても重要だということ。
実は私は、軽い気持ちで「大きな18Kのリングが作りたい」と思っていたのですが……
比重を知れば知るほど、それがかなり“非現実的”だと理解しました。
18Kは銀よりずっと重い素材。大ぶりのデザインにしてしまうと、手に乗せた瞬間に“鉱石”のような存在感になってしまいます。
素材の選択は、見た目だけでなく、重さ・着け心地・構造強度・コストまで影響するもの。
夢を見つつも、その裏にある“物質としての現実”を理解することが大切なのだと気づかされました。
■ 地金づくりから形をつくる時間
比重の話で金属の奥深さを知ったあとは、実際の作業へ。
純銀を溶かし、ローラーで伸ばして地金をつくり、溝台とハンマーで片面を叩いて甲丸型に成形していきます。
その後リング状に丸めてロウ付けし、「silver」刻印をひと打ち。

小さな印が打たれた瞬間、金属がアクセサリーとして目を開くように感じます。
■ 仕上げは“丸み”と“光”を育てる作業

ロウ付けが終わったら、やすりで丁寧に甲丸の丸みを削り出し、やすりと研磨剤で磨きを重ねます。
電動のやすりを使うこともあるのですが、フットコントローラーの操作は「上手ですね」と褒めていただきました。おそらく、ミシンの足さばきと同じ感覚だからだと思います。
銀の表面がふっと滑らかになり、光が微細に走りはじめると、ただの地金だったものが急に装飾品の顔を見せてきます。
存在感のある5ミリ幅でも、丸みのおかげで圧迫感はありません。

薬指の3連リング、小指のピンキーも合わせて、地金ミックスのレイヤードを楽しんでいます。
ピンクゴールドのエタニティやイエローゴールドのスキニーリングとも自然に重ねられ、指先の風景を少しだけ豊かにしてくれます。
■ 道具の世界の奥深さ
やすりだけで20本以上。
正直、今はまだ違いが分からず、机の上にずらり並ぶと“見慣れない楽団”のようです。
ロウ付けする際にピンセットの傾きを調整する補助具など便利なアイテムも多く、長い歴史の中で積み重ねられた工夫がそっと息づいていました。
■ やっぱり「楽しい」
右も左も分からない段階のままですが、ひとつだけ確かなことがあります。作るって楽しい。
時間をかけて形になっていくほど、完成した瞬間の光が胸の奥で静かに灯ります。
■ そして、少しだけ控えめな本音
冷静に見ると、今回作ったリングはとてもシンプルで、ごくありきたりの形です。
公の場でわざわざお見せするような“特別なデザイン”ではありません。
それでも、自分の手でひとつひとつ工程を刻んで作ったというだけで、私にとってはかけがえのない一本になりました。
代わり映えのないリングのご紹介で、なんだか恐縮です。
けれど、こうして自分の指におさまる姿を見るたびに、小さな達成感がふっと立ち上がります。
次回はいよいよ、石の土台づくりのレッスン。
また新しい金属の景色に出会えそうで、そっと胸が高鳴っています。
