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ウィリアムモリスについて リバティの柄図鑑

リバティのストロベリーシーフについて|ウィリアム・モリスの傑作

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ウィリアム・モリスの代表作「ストロベリーシーフ」の魅力

ウィリアム・モリスのデザインの中でも特に有名な「ストロベリーシーフ(いちご泥棒)Strawberry Thief」。このデザインは、アパレル業界をはじめ、壁紙やカーテンなどのインテリアファブリック、マスキングテープなどの文具まで、多岐にわたる商品に使用されています。今回は、その「ストロベリー・シーフ」に焦点を当てます。

ウィリアム・モリスとは-ストロベリーシーフの生みの親

ウィリアム・モリスはどのような人物だったのでしょうか?

ウィリアム・モリスは19世紀を代表するイギリスの芸術家、詩人、そして社会運動家です。「モダンデザインの父」とも称され、多方面で活躍した人物です。彼の生きた時代、ヴィクトリア朝時代は産業革命が全盛期を迎えていました。この時期には大量生産が進む一方で、粗悪品が市場に溢れるという問題もありました。モリスはこの状況に危機感を抱き、生活と芸術を統一する「アーツ・アンド・クラフツ運動」を提唱しました。

ウィリアム・モリスの功績

モリスが手作りによって質の高い芸術品を生み出そうとした結果、150年以上経った現在も愛され続けるテキスタイルやタペストリーが生まれました。彼のデザインは、今も多くの人々にインスピレーションを与えています。

以下は、年代ごとにまとめたものです:

1834年イギリス・ロンドン北東部で生まれる
1848年15歳ウィルトシャー州のパブリックスクール・モールバラ校に入学。寄宿生活
1851年17歳モールバラ校を自主退学
1853年19歳聖職を志し、オックスフォード大学エクセター学寮に入学
1854年20歳~1855年21歳画家集団ラファエル前派とダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの存在を知る。大陸旅行や北フランスを訪れ、聖職に代わり芸術を志す
1856年22歳ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティに絵を学ぶ
1861年27歳仲間7人の共同出資によるモリス・マーシャル・フォークナー商会創設。住居・教会・公共建築用の壁画装飾や彫刻、ステンドグラス、金工、家具や生活必需品や装飾制作を行う
1862年28歳ロンドン万博に出品した「ステンドグラス」「刺繍と絵付け家具」が受賞
1868年34歳~1870年36歳長編物語詩「地上の楽園」4部作を発表
1875年41歳商会を単独経営のモリス商会に改組。テキスタイル事業を拡大する。(同年リバティ商会が創設される)
1877年43歳古建築物保護協会を創設。講演活動を開始
1881年47歳中断していたインディゴ染めの実験を再開し、「兄弟うさぎ」「小鳥とアネモネ」「薔薇とあざみ」をデザイン
1883年49歳 「ストロベリーシーフ(いちご泥棒)」をデザイン
1890年56歳活字書体デザインに取り組む
1896年62歳死去

ストロベリーシーフの誕生-ウィリアム・モリスの革新的デザイン

では、モリスの代表作である「ストロベリーシーフ」はどのようにして誕生したのでしょうか?次に、その背景と魅力について詳しく見ていきましょう。

インディゴ抜染法

ウィリアム・モリスは1866年に染色の技術に挑戦しました。彼は木版と天然染料にこだわり、効率や利益よりも質を追求しました。数々の実験を重ねて1883年にインディゴに染めた布を部分的に白く抜き模様を作る「インディゴ抜染法」を完成させました。

ストロベリーシーフの誕生

この技術の成果として生まれたのが「ストロベリーシーフ(いちご泥棒)」です。

このデザインは、インディゴ抜染の藍に赤と黄色を組み合わせた初のテキスタイルでした。制作には複雑な作業工程と高度な技術が必要で、長い日数を要しましたが、その美しさと独自性からモリス商会のコットンプリントの中で最も高価でありながら、最も人気のあるファブリックとなりました。

「ストロベリーシーフ」のデザインが生まれたきっかけ

モリスはケルムスコットにある別荘の庭でイチゴを育てていました。ある日、収穫しようとしたいちごを小鳥たちが食べてしまうというエピソードが、この柄のインスピレーションとなりました。可愛らしい「いちごの泥棒さん」が誕生した瞬間です。

ストロベリーシーフ柄

「Strawberry Thief」の「Thief」は「泥棒」を意味します。このユーモラスなタイトルは、自然の恵みを頂く小鳥たちに対するウィリアム・モリスの暖かい視線を感じさせます。このデザインには、ツグミやムクドリが描かれていると言われています。

ツグミ
ムクドリ

リバティ社でストロベリーシーフが販売されている理由

なぜウィリアム・モリスのデザインがリバティ社で販売されているのでしょうか?この疑問について詳しく解説します。

同時代の二大巨頭:アーサー・リバティとウィリアム・モリス

19世紀後半、アーサー・ラセンビィ・リバティ氏がリバティ商会を設立し、ウィリアム・モリス氏がモリス商会を発足しました。彼らは同時代を生き、共に経営者として、また芸術を深く理解する者同士として多くの共通点を持っていました。彼らは同志でもあり、またライバルでもあったと言えます。ウィリアム・モリスのデザインは、当時のリバティ商会にも多大な影響を与えました。

リバティ社によるデザインの継承

彼らがこの世を去った後、1940年にモリス商会が倒産しました。この出来事を受けて、リバティ社はウィリアム・モリスのデザインを何種類か保持することとなりました。これがリバティ社によるモリスデザインの販売がスタートした背景です。

ストロベリーシーフのデザインの変化-リバティ社での進化

ストロベリーシーフの原板は、リバティ社で販売されているものよりもかなり大きいのです。

1979年にリバティ社はインテリアファブリックにこの柄を使用しました。その後、タナローン用に柄を縮小し、デザインを調整しました。

1995年には、リバティ社のクラシックコレクションに加入しました。以来、ストロベリーシーフは不動の人気を誇っています。

ストロベリーシーフの色々-多彩なデザインの魅力

ここでは、ストロベリーシーフにまつわる柄についてお話します。

ストロベリー・シーフ・スプリング

ストロベリーシーフは渋い色合いのイメージが強いですが、明るい色合いのバリエーションもあります。

例えば、2019年のSSクラシック・レンジや2020年のジャパン・エターナル・コレクションでは、明るい背景色に変更されました。これにより、ストロベリーシーフのデザインはより明るく、軽やかな印象を与えます。

また、2024年のネオンリバティコレクションでは、ストロベリーシーフスプリングの一部の色がネオン配色に置き換えられ、さらに明るく軽やかなデザインになりました。

さらに、ショップ・サンドウノオリイジナルカラーでは綺麗な発色のストロベリーシーフに生まれ変わりました。特に左側の色合いのポーチは人気があります。ただし、2024年6月時点で左側の色合いの生地は完売しています。

同じストロベリーシーフでも、色合いによって大きく印象が変わることがわかります。

ストロベリー・フィースト

ウィリアム・モリスとは直接関係ありませんが、この可愛らしい鳥柄は「ストロベリー・フィースト」呼ばれています。

2016年春夏追加コレクション「The garden of Dreams」という子供向けコレクションの一部としてデザインされました。ストロベリーシーフを連想させる愛らしいデザインで、小鳥は可愛い鳩(Feast)に、花もデフォルテした愛らしい柄に生まれ変わりました。

ちなみに柄の説明は以下のとおりです:

夏の饗宴のために青い鳥が運んできたイチゴ。

鳥が苺をついばんでいたストロベリーシーフとは反対に、鳥が苺を運んでくるなんて!これまた可愛いストーリーですね。

akinobu

一見するとストロベリーシーフに見えますが、良く見ると異なるデザイン「akinobu」も存在します。ストロベリーシーフの鳥が魚に変わっており、花がヒトデや貝、イソギンチャクに変わっています。細かい部分にはハートや星の形も描かれており、可愛らしさが表現されています。

akinobu柄
akinobu

このデザインは、リバティの2010年の秋冬コレクションのテーマ「花鳥風月」で、日本人アーティストツモリチサトさんとのコラボレーション企画でで生まれました。

1883年に生まれた柄が、現代に至るまで様々なアレンジを受けながら進化していく様子には夢を感じます。

ウィリアム・モリス柄が日本で人気の理由

なぜ今でもウィリアム・モリスのデザインは日本で愛され続けているのでしょうか?それには、彼の作風が日本の水彩画と共通する点が挙げられます。

日本とウィリアム・モリスの自然観の共通点

日本の美は自然との共生にあり、自然のままの美しさを尊重します。これに対し、ヨーロッパの伝統的な自然観は、自然を改造し人間の役に立てるという考え方が一般的です。しかし、ウィリアム・モリスのテキスタイルはヨーロッパ的な視点ではなく、日本の自然観に近い感覚を示しています。

モリスのデザインが日本で愛される理由

モリスの作品は植物、花、小鳥などをモチーフにしており、これが日本や東洋の美的感覚と合致しています。彼のデザインには自然の美しさと調和があり、それが日本人の美意識に共鳴しているのです。彼の作品は、今後も日本で愛され続けることでしょう。

リバティ×リバティのストロベリーシーフ柄商品

リバティ×リバティでは、数多くのストロベリーシーフ柄の商品が販売されています。

ストロベリーシーフ柄は非常に多くのファンを持ち、このデザインの商品をコレクションしているお客様もいます。
実際に、私もストロベリーシーフの大ファンです。スマホのカバーやロック画面、待ち受け画面など全てをストロベリーシーフ柄に設定しており、色を変えて楽しんでいます。この140年ほど前に誕生したデザインを毎日見ることで癒されています。

ストロベリーシーフだけでなく、ウィリアム・モリスの他のデザインも大好きです。この愛はいつまでも変わることはありません。

さいごに

ストロベリーシーフのデザインは、その芸術的価値と歴史的背景から多くのファンを魅了しています。その美しさと独自性が、多岐にわたる商品に活かされ、愛されています。
リバティ×リバティの商品を通じて、ストロベリーシーフ柄の魅力を日常に取り入れてみてください。

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一緒に読みたい記事 「リバティのロデンウッド-ウィリアム・モリスの遺産|美しきデザインの魅力」

参考文献)

・藤田直彦(2022年)『もっと知りたい ウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ』 東京美術.

・浜本隆志(2022年)『図説 ヨーロッパの装飾文様』 河出書房新社.

この記事の著者

秋山 良枝

広島県生まれ。2歳から11歳までブラジルで過ごす。神戸市の大学を卒業後、5年間企業勤め。30歳で看護師免許を取得。
都内の大学病院勤務を経て子育て中に 子どもが中身を把握でき、自ら探せるポーチを手作りしたことがリバティ×リバティの原点。
2013年から制作活動を開始。看護師の経験を生かし、お子様からご高齢の方まで誰もが使いやすいポーチ作りに励んでいる。

“リバティのストロベリーシーフについて|ウィリアム・モリスの傑作” への6件のフィードバック

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